OCRの限界に挑戦!
“読みにくい文字”をどこまで読み取れるのか?
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現代の企業において、業務効率化は重要な課題の一つです。その中で注目されているのがOCR技術。書類のデジタル化を通じて、膨大なデータを効率的に処理できる可能性を秘めています。しかし、導入を検討する際に気になるのが「実際の精度はどれほどのものか?」という点です。本コラムでは、実際にOCRを使って様々な状況下でどこまで読み取れるかを検証します。具体的なポイントや事例を交え、OCRの実力と可能性をご紹介します。

目次

    はじめに:OCRとは?基本的な仕組みと利用方法

    OCR技術の仕組み

    OCRとは、Optical Character Recognitionの略で、日本語に訳すと「光学文字認識」といい、画像の中から文字情報を抽出しデジタルデータに変換する技術のことです。これは、紙の書類や手書きの文書をデジタル上で効率的に処理、記録することを可能とします。OCRの大まかな仕組みは以下のように、「スキャン」→「前処理」→「文字認識」→「出力」となります。

    どうやって業務に活用できる?

    OCR(光学文字認識)を業務に取り入れると、様々な業種で業務プロセスの効率化を図ることができるといわれています。
    業界ごとのOCR導入対象となる書類の例
    金融
    小切手の署名や金額部分
    銀行口座、ローン、クレジットなどの契約書類

    教育
    答案用紙と採点結果
    成績の評価報告書
    出欠簿などの日報

    官公庁
    住民登録や転居届などの申請書
    市民の意見を収集したアンケート
    会議などの議事録

    OCRが苦手とする文字とは?

    OCRには、技術の特性や動作原理に基づいたいくつかの制約によって、特定の文字や状況で認識精度が低下する場合もあります。実際、汚れ過ぎた文字や劣化しすぎた文書を読み取るのには限界があります。

    苦手な文字や状況

    難解だったり特殊すぎる文字

    筆跡の個人差や極端に崩れた文字などのバラツキや、画数が多く細部が潰れている文字は認識できない場合もあります。また、常用外の難読漢字といったデータベースに存在しない文字は、認識できません。

    文書自体の劣化や加工が施されている

    紙やインクの劣化により文字と背景のコントラストが低下すると、正常な認識が難しくなります。また、下線やハイライトが引かれていたり、紙自体に光沢加工が施されていると認識が難しくなる場合があります。

    背景と技術的制約

    パターンマッチングの限界

    OCRの基本的なアルゴリズムは、既知の文字パターン(標準フォント)と入力画像から抽出されたパターンを比較するものが多いです。微妙な違いや汚れ、手書きの不規則性は、極めて類似した認識が難しいです。

    データセットの限界

    機械学習モデルはトレーニングデータに依存します。トレーニングされたデータセットが特定の種類の文字を十分に含んでいない場合、認識精度が低下します。

    OCRの精度検証!

    それでは実際に、OCRはどの程度の精度で文字を正しく認識できるのか、検証していきます!

    検証方法
    右図のような架空の発注書を作成し、そこに実際に起こりそうな汚れを付けてスキャンし、OCRがどの程度読み取ることができるのか検証しました。
    読み取り対象は以下の4種類を用意しました。
    目視でも十分読める文字
    少し読みづらい長文の文章
    難読漢字
    朱インク汚れ

    架空の発注書

    Order Form

    検証1 目視でも十分読める文字

    まずは簡単な、人の目でも読むことができる文字で検証していきます。

    書いた文字

    納品時に商品の取り扱いに注意してください。

    読み取り結果

    納品時に商品の取り扱いに注意してください。
    読み取り成功!
    目視でも十分読み取れる文字は、問題なく正常に読み取ることができました。

    検証2 少し読みづらい長文の文章

    続いて、長く読みづらい、少し癖のある文章を検証します。読めないことはないですが、筆跡が雑になっており、さらに複数行に分かれて書かれたものになります。こちらはどれほどの精度で読み取ることができるのでしょうか?

    書いた文字

    納品場所の倉庫は午前9時から午後5時まで開いています。納品時には必ず、担当者に連絡を取って、納品の確認を行ってください。納品物はすべて検品を行い、数量や品質に問題ないか確認してください。

    読み取り結果

    納品場所の倉庫は牛前9時から午後5時まで開いています。納品時には必ず、担当者に連絡を取って、納品の確認を行ってください。納品物はすべて検品を行い、数量や品質に問題ないか確認してください。
    一部失敗…
    人の目で見ると文脈を通して読むことが可能な文字でしたが、OCRでは少し線が出ているだけでも、逆に正確すぎるために、意図しない文字として認識してしまうようです。OCRの中には、単語や表現を学習することで、自動修正してくれるものもあります。

    検証3 難読漢字

    3番目の検証は、難読漢字の読み取りを検証していきます。画数の非常に多い「龗」という漢字を使った架空の住所を書いて、それを正確に読み取れるか検証します。

    書いた文字

    東京都吉之峰区龗字断弾町11-11インフィニティタワー

    読み取り結果

    東京都吉之峰区龗字断弾町11-11インフィティタワー
    一部失敗…
    画数の多い「龗」は読み取ることができましたが、カタカナの「ニ」を「ン」と誤って認識しています。こちらも、人の目で見れば単語の並びから推察して間違えない文字ですが、一文字ずつ認識するOCRだと、読み取りがブレてしまうようです。OCRでは、AIによる学習特定単語の辞書登録も可能なので、このような誤読されやすい単語も正確に読み取れるようになります。

    検証4 朱インク汚れ

    最後の検証は、朱インクの汚れになります。

    書いた文字

    書いた文字(1行目):P9675
    書いた文字(2行目):P3861

    読み取り結果

    読み取り結果(1行目):P9675
    読み取り結果(2行目):P3861
    読み取り成功!
    朱インクで背景が赤くなってしまった文字でも、OCRは正確に読み取ることができました。たとえ用紙が汚れてしまっても、文字の色と異なった色であれば、読み取りへの影響はそこまで無いようです。OCRには、訂正線や訂正跡を自動で読み飛ばす機能があるものもあるため、もしこの汚れが黒に近い色になると、正確に読め取れなくなる可能性もあるかもしれません。

    検証結果

    検証の結果、OCRの読み取りには、以下のような特徴があることがわかりました。

  1. 人間の目で見ても読むことができる文字は、高精度に認識することが可能。
  2. 一文字ずつ認識するため、明らかな誤字であっても、逆に誤ったまま認識してしまう。
  3. 用紙が汚れていても、文字の色と異なっていれば、読み取りへの影響は少ない。
  4. OCR精度向上につながる3つのポイント

    OCR技術は、デジタル化の進行に伴い、その重要性がますます高まっています。うまく運用することで、データ入力の自動化や検索性の向上、そしてアーカイブの効率化が実現し、組織全体の生産性向上につながります。今回は、OCR精度を高めるためのポイントについて詳しく解説し、そのメリットを最大限に引き出すための具体的なアプローチを紹介します。

    01 スキャン解像度を高く設定する

    OCRの精度を高めるためには、スキャン画像の品質が非常に重要です。特に、300~400dpi程度の解像度が推奨されており、文字の細部までしっかり読み取れることで認識精度が向上します。高解像度でスキャンすることで、文字の輪郭や細かい印刷が鮮明になり、手書き文字や小さな文字も正確に読み取れるようになります。ただし、ホチキス留めや糊付けされている紙の書類は、スキャンできないことが多く、OCRには向きません。そのため、スキャンする前に読み取り対象の状態を確認することが重要です。

    検証 解像度

    02 画像前処理の活用

    OCRの精度は、画像の前処理によっても大きく変わります。具体的には、コントラスト調整・ノイズ除去・シャープ化などの処理が有効です。これらの処理はOCRソフトで行うこともできます。
    前処理を行うことで、文字と背景の差がはっきりし、誤認識を減らすことができます。特に手書きやスキャン品質が不安定な場合に効果的です。

    03 OCRソフトの選定

    OCRの効果を最大限に活かすには、業務に合ったソフトの選定と、データ取得の自動化がカギです。手書き文字や多言語対応が必要な場合には、専門性の高いソフトを選ぶことで、精度の高い読み取りと作業効率の向上が期待できます。
    また、複数帳票が整理されていない状態でも、OCRに自動仕分け機能が付いていれば、手間がかかりません。さらに、自動化機能と組み合わせることで、入力作業の削減や業務スピードの向上にもつながります。

    今回の検証で使用したOCR製品

    NSW-OCRは手書き書類や帳票の文字を識別し、自動でデータ化するサービスです。
    96.77%の高精度読み取りと自動処理を組み合わせることで、飛躍的な効率化とペーパーレス化を支援します。

    機能・特徴

    ディープラーニング学習による高精度な読み取り
    様々なフォントなどの膨大なパターンをディープラーニング学習させ、高い読み取り精度を実現!

    AIによる識字率の向上
    判読が難しい個別の文字もAIが学習し、最適な文字を選択することで、識字率96.77%を実現!

    各種DBを用いて自動補正
    住所・銀行名・英単語といった各種DBを参照することで、読み取ったデータの誤字を自動修正!

    フォルダ単位でのアクセス権設定
    各部門や各支店・工場のフォルダを作成することで、1つの契約で複数部門(部門単位・ユーザー単位)でご利用いただくことが可能です。

    活用事例

    総務人事部でNSW-OCRを導入、入社手続きの効率化を実現

    当社総務人事部にて履歴書や保証書、振込依頼書など、入社に関わる書類750枚分のデータ入力を想定したところ、従来の手作業では約100時間かかっていた作業が、AI-OCRの活用により28時間まで短縮できました。
    入力ミスも大幅に減少し、作業品質の向上にもつながっています。
    導入当初は職員への教育が必要でしたが、運用効果が高く、現在では他部門への展開も進んでいます。

    他ユースケース

    物流業界では、伝票や出荷指示書をOCRで読み取ることで、手入力の手間を削減し、出荷処理のスピードと正確性を向上させています。これにより、作業効率の改善だけでなく、ヒューマンエラーの防止にもつながっています。また、小売業界では、仕入伝票や棚卸表のデータ化にOCRを活用し、在庫管理の精度を高め、売上分析や需要予測への応用が進んでいます。こうした取り組みは、現場の業務負荷軽減と経営判断の迅速化を同時に実現しています。

    おわりに:OCR導入の未来と今後の可能性

    OCR技術は今後、AIとの連携を通じてさらなる進化を遂げ、業務の効率化だけでなく、企業の意思決定や戦略策定にも大きく貢献していくと考えられます。本コラムを通じて、OCRの可能性を少しでも具体的に感じていただけたなら幸いです。

    現在、無償トライアルのご案内も行っておりますので、ご興味をお持ちの方はぜひこちらのフォームよりお問い合わせください。業務改革への第一歩として、ぜひこの機会をご活用ください。

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