医療・検査機器の保守現場では、機器の稼働状況やエラー情報、使用状況を正確に把握し、トラブル発生時に迅速な対応につなげることが求められます。一方で、現場からの連絡や定期訪問に依存した管理では、異常の予兆をつかみにくいケースもあります。本記事では、医療・検査機器の状態を見える化し、保守品質を高めるための考え方を解説します。
医療・検査機器で装置稼働の見える化が難しい理由
医療機関に設置された検査装置や診断機器は、日々の診療を支えるインフラとして、安定稼働が求められます。
一方で、装置は全国・海外の医療機関に分散しており、サービス拠点やコールセンターからは「今どの装置がどんな状態なのか」をリアルタイムに把握しづらいのが現状です。
トラブルが発生した際には、利用施設からの電話連絡にもとづいて状況をヒアリングし、必要に応じてサービス員が現地に駆け付けて調査・復旧を行う、という流れが一般的です。
しかし、このやり方だけに頼っていると、どうしても「気づきの遅れ」や「対応の長期化」が発生してしまいます。
稼働データやログ情報がタイムリーに集まらないことで、装置の状態を俯瞰的に把握できず、ダウンタイムの最小化や保守コストの最適化、製品開発へのフィードバックにも制約が生じています。
医療機器メーカーやサービス会社からは、次のようなお悩みをよく伺います。
● 故障の問い合わせのたびに、状況把握のための電話ヒアリングに時間がかかってしまう
● 現地訪問してみると想定外の故障で、必要な部品が足りず再訪問になるケースが多い
● 国内外に設置された装置の稼働状況を、リアルタイムかつ一元的に把握できていない
● 災害時や立ち入り制限時など、現地に入れない状況で装置状態を確認しづらい
● お客様の利用状況データがないため 、製品改良や新サービス企画に十分活かし切れていない
こうした課題に対して、
「現場の装置が、今・どこで・どのように動いているか」を可視化することが、解決の出発点になります。
現場とサービス部門で本当に求められる情報とは
装置の稼働状況を把握するうえで、本当に知りたいのは、単なる「オン/オフ」や「エラーの有無」だけではありません。
現場とサービス部門の双方にとって重要なのは、いつ・どこで・誰が・何が・なぜ・どのようにという視点での判断に必要な情報が揃っていることです。
● いつ(When):エラーや停止がいつ発生し、どのくらい続いているのか
● どこで(Where):どの施設・どの装置・どの設置場所で問題が起きているのか
● 誰が(Who):どの医療機関・部署・診療チームに影響が出ているのか
● 何が(What):どの機能・検査プロセスで、どのようなエラーが出ているのか
● なぜ(Why):直前の操作や条件など、発生のきっかけとなった要因の手がかり
● どのように(How):現在の装置状態や暫定対応の状況、診療への影響の度合い
こうした情報をサービス拠点やコールセンターからすぐに確認できるかどうかが、初動対応のスピードや原因切り分けの精度に大きく影響します。
現場の利用者にとっても、「問い合わせのたびに同じ説明を繰り返さなければならない」「復旧までの見通しが分からない」といった負担は少なくありません。
IoTによる稼働データ・ログ情報の可視化および分析は、こうした現場とサービス部門の双方にとっての“知りたい情報ギャップ”を埋める取り組みと言えます。
実際の現場では、IoTはどう使われているのか
ここでは、医療・検査機器向けのIoT活用を、実際の現場運用の流れに沿ってご紹介します。狙いは、装置の状態を「問い合わせが来てから把握する」運用から、稼働データとログにもとづいて先回りできる運用へ移行することです。
1)装置の稼働状況・ログ情報を自動で集め、クラウドに蓄積する
医療機関に設置された検査装置・診断機器の稼働状況やログ情報(エラーコード、アラート、運転状態など)を自動で収集し、クラウド上に蓄積します。これにより、装置ごとの状態を「現地で確認する」必要が減り、サービス拠点やコールセンター、本社・開発部門が同じ情報を参照できるようになります。
実際に、日本電子株式会社が提供する分析装置用IoTパッケージ「JEOINT™システム」に、NSWのIoTプラットフォーム「Toami」が採用されています。装置情報をリアルタイムで収集・蓄積・可視化し、保守サービスの品質向上に貢献することが狙いとされています。
2)異常の“兆し”を早めに捉え、必要なものだけ通知する
異常は完全停止として突然起きるのではなく、エラー頻度の増加や特定条件下での異常値など、“兆し”として現れることがあります。稼働データやログ情報を常時収集しておくことで、次のような変化を早い段階で把握できるようになります。
● ある装置だけでエラーがじわじわ増えている
● 特定条件(時間帯・モード・環境条件など)でのみ異常が出ている
● 再起動やリトライが多く、装置に負荷がかかっている
通知は「多すぎる」と運用が回らなくなるため、重要度や緊急度で絞り込み、対応優先度を判断できる粒度で届けるのがポイントです。
3)コールセンター/サービス拠点がログを見て一次切り分けし、準備して出動する
異常が発生した際、サービス拠点やコールセンターが装置の状態・アラート履歴・エラーコードをすぐに確認できれば、電話ヒアリングの時間を短縮し、原因の切り分けを早められます。また、必要な部品や想定作業を事前に準備したうえで出動できるため、再訪問(部品の持ち替え)を減らし、復旧までのリードタイム短縮につながります。
4)蓄積データを分析し、保守計画・製品改善へフィードバックする
IoTで収集した稼働データや利用パターン、エラー傾向を分析することで、現場で起きている課題を“推測”ではなく“事実”として捉えられます。その結果、次のような改善につなげることができます。
● 故障が起きやすい条件・部位の特定
● 点検周期や交換目安の見直し(予防保全の精度向上)
● 使用実態に即した機能改良・サービスメニューの検討
こうした運用で何が変わるのか
このように、IoTを運用フローに組み込むことで、「気づきの遅れ」→「初動の遅れ」→「復旧の長期化」 という課題を段階的に解消し、装置停止リスクの低減、サポート品質の向上、保守業務の効率化を同時に進めやすくなります。
医療・検査機器の現場DXを支えるIoT活用のポイント
医療機器メーカーやサービス会社が、装置の遠隔監視・予防保全を本格的に進めていくうえで、「ゼロからシステムを自社開発する」のは大きな負担になります。
こうした中で、既に多様な業種で実績のあるIoTプラットフォームを活用し、自社の装置やサービスに合わせてカスタマイズしていくことが、リスクを抑えながらDXを前進させる、現実的なアプローチと言えます。
● 現地訪問による手作業収集から、遠隔・自動でのデータ収集へ移行できる
● Webブラウザ上で稼働状況やアラート履歴を確認でき、原因の切り分けと派遣判断をスピードアップできる
● 稼働データや利用パターンを分析し、製品改善や新サービス企画に活用できる
装置のダウンタイムと機会損失を抑えながら、サポート品質と顧客満足度の向上を同時に実現するための基盤としてご利用いただけます。
医療・検査機器向けIoTソリューションの活用例や事例の詳細を知りたい方や、こんな使い方ができるのか?といったご質問やご相談がありましたら、ぜひお気軽にお問い合わせください。過去の事例を参考にご紹介します。
IoTプラットフォーム「Toami」

Toami(トアミ)は、現場のさまざまな機器やセンサーからデータを収集し、クラウド上で蓄積・見える化・活用までを一気通貫で実現するIoTプラットフォームです。多様なプロトコルやデバイスに対応したデータ収集基盤と、スケーラブルなデータ蓄積機能、ブラウザ上で柔軟に画面を構成できるアプリケーション開発基盤を備えており、小規模なPoCから本格展開まで、段階的なIoT活用を支援します。
主な機能
● リアルタイムイベント検知によるアラート通知や機器制御
● 外部の業務システムやWebサービスとのデータ連携
● AI・分析基盤との連携による高度なデータ活用
といった拡張も可能で、医療・検査機器をはじめ、食品加工・小売・建機・エネルギーなど幅広い業種・用途でご利用いただいています。
こんなお悩みはありませんか?
- 小さく始めて効果を見極めながら、段階的に拡大していきたい
- 通信やセキュリティなどインフラ部分は、できるだけ既存サービスに任せたい
- 自社の装置やサービスに合わせて、画面やアラートを柔軟にカスタマイズしたい
- 将来的には、他の業務システムや分析基盤とも連携させていきたい
こうしたお悩みに対して、
Toamiは「遠隔監視のための基盤」と「医療・検査機器の現場DX」を
両立するプラットフォームとして、段階的な導入と拡張を支援します。
Toamiで医療・検査機器をスマートに管理
医療機関に設置された検査装置・診断機器などの稼働状況やログ情報を、ゲートウェイを通じ自動で収集し、閉域網経由でクラウド環境へ安全に蓄積します。
クラウドに蓄積された情報は、サービス拠点やコールセンター、システム管理者がWebブラウザからリアルタイムで閲覧でき、装置ごとの状態やアラート履歴を一覧表示やグラフで簡単に確認することが可能です。
これにより、故障や不具合に対する日々のサポート体制を支えつつ、故障箇所の診断や部品選定を事前に行うことで、二度手間の削減と保守・修繕業務の効率化、ダウンタイムの最小化を実現します。
さらに、収集した稼働データや利用状況データを分析することで、製品改善や新たなサービスの企画・開発といった価値創出にもつなげることができます。
導入ステップ
- ① ヒアリング・現状把握
- 取り扱い装置の種類や設置台数、サポート体制、既存のリモート監視有無、課題(ダウンタイム・再訪問・顧客満足度など)をヒアリングします。
- ② 試行導入(PoC)
- 代表的な装置・エリアを対象に、通信ユニットの接続、データ収集、Toami画面の試作、アラート設計などを行い、運用イメージと効果を検証します。
- ③ 本格展開・運用定着支援
- 機種・地域ごとの展開計画を立案し、サポート体制との連携、サービス員向けのトレーニング、アラートチューニングなどを通じて日常のサービス業務に根付くまで伴走します。
日々稼働する医療・検査機器の安定運用や、装置稼働データの有効活用は、今後ますます重要性を増していきます。本コラムでご紹介した内容が、みなさまの現場で「どこから着手すべきか」を考える際のヒントになれば幸いです。
Toamiを活用した遠隔監視・予防保全、スマホアプリと連携した保守・サポート高度化の取り組みについて、より具体的な検討や個別のご相談をご希望の方は、下記よりお気軽にご連絡ください。
