金融機関のDXが進む中、株式会社山梨中央銀行(以下、山梨中央銀行)は、銀行システム(勘定系システム、情報系システム)の強化と業務効率化に向けた取り組みを加速させています。その中核となるのが、システム統括部による内製化の推進と、24時間365日の運用監視体制の確立です。この取り組みの一環として、コスト削減と安定運用を実現するため、NSWの運用監視サービスを導入しました。本記事では、そのサービス導入の背景や成果について紹介します。
課題
- 情報系システムの重要度増加に伴う運用監視体制の強化
- 24時間365日稼働に対応するためのシステム運用コストの増加
- システム運用業務の抜本的な見直しによる合理化・効率化の促進
解決策
- 運用監視サービスにより24時間365日の監視体制を確立
- 運用監視サービスを活用することで、コストの抑制を実現
- システム運用監視のアウトソーシングと業務プロセスの見直しを実施
効果
- 当初の導入目的である情報系システムの24時間365日の運用監視の実現
- 以前の運用コストに比べ2~3割程度のコスト削減
- システム運用業務の効率化の実現


山梨県を中心に東京都・神奈川県で銀行業を展開する金融機関。1877年に創業した第十国立銀行を前身に、1941年に現在の「山梨中央銀行」が発足しました。創業150周年にあたる2027年に向けた長期ビジョン「Value Creation Bank」を掲げ、「地域社会に豊かさを」「お客さまに笑顔を」「職員に働きがいを」「株主の皆さまに満足を」を実現する金融グループを目指します。
コミュニティを育む銀行の役割
デジタル技術を活用、地域社会とともに成長するための経営戦略
山梨中央銀行は、山梨県の経済を長年にわたって支え続ける県内唯一の地方銀行です。近年は銀行法改正による金融機関の規制緩和を受け事業多角化・新事業開拓の推進、さらにはTikTokに公式アカウント(とある地方の銀行員:@toaru.chihounoginkoin)を開設して顧客接点の拡大を図る施策など、新たな分野にも積極的に挑戦しています。
そんな山梨中央銀行の事業をシステムの面から支えてきたのが、システム統括部です。

執行役員 システム統括部 部長 広瀬 哲郎 様
「銀行のシステムといえば、少し前まで安全・安心・安定して稼働するのが当たり前という時代が続いてきました。しかし経営の安定とビジネスの拡大を見据えたとき、銀行自らがイノベーションを生み出す力がなければ事業環境の変化に追随できないと考え、私たちシステム統括部では多種多様な銀行システムの内製化も進めました。このシステム内製化のおかげで円滑な事業運営や生産性向上、業務効率化を実現したと自負しており、その取り組みを継続しているところです。」(広瀬 様)
現在ではそうした取り組みをさらに発展させ、これまでに培ってきたスキルやノウハウを地域のお客さまに還元すべく、営業部門とシステム統括部が共同でチームを組成してITコンサルティングサービスの提供を開始しています。さらに、経営企画部が主導するデジタルトランスフォーメーション(DX)推進の取り組みにも積極的に関与しているといいます。
このように間接部門という枠を越えて山梨中央銀行のビジネスに大きく貢献しているシステム統括部ですが、当然のことながら銀行業務に不可欠な銀行システムの運用監視もシステム統括部の重要なミッションの1つです。
「銀行システムの運用監視を担当しているのが、システム統括部のシステム運用課です。システム運用課には、行内ネットワークを含むシステム基盤(AWS、Azureを含む)の企画・整備・管理を担当する基盤管理チーム、システム運用委託先と連携して銀行システムの安定的な運用管理を担当する運用管理チームの2つのチームがあり、日々の業務を遂行しています。」(渡邉 様)
導入の背景・課題
インシデント発生時の即時対応と業務効率化が課題に
一般的に金融機関のシステムは、入出金や振込、預金・融資の取引管理、利息計算といった処理を担当する勘定系システムと、経営管理や営業支援など多種多様な銀行業務を支える情報系システムに大別されます。これは山梨中央銀行も例外ではありません。

システム統括部 システム企画課 小俣 英樹 様
「銀行の勘定系システムというのは重要な社会インフラの1つであり、システムを稼働し続けることが銀行の大きな使命です。さらに近年は情報系システムにおいても、銀行業務支援、営業支援など の面から勘定系システムと同様に安定稼働が重要になっています。また、銀行の各種サービスは24時間365日停止することなくお客さま に提供しています。その状況下において、システム運用監視によるシステム停止の回避は、より重要性を増しているのです。
そこで山梨中央銀行では、『24時間365日の運用体制を維持すること』、『障害発生によるシステム停止を回避すること』、『インシデントが発生した際の迅速な連絡体制を確立すること』、『稼働状況やインシデント発生時の記録といった情報を一元管理すること』の4点を特に重要視しています。」(小俣 様)
山梨中央銀行では勘定系システムは従来から24時間365日のシステム運用監視体制を敷いていました。しかし、当時システム運用課 課長を務めていた小俣様によると、情報系システムの夜間については一時的に無人状態であり、一部情報系システムのインシデント発生時にはシステム運用課の担当者が電話による自動通報サービスを受ける仕組みになっていたといいます。

「夜間にインシデントが発生すると、電話を受けた担当者が出社をしてインシデントの詳細な内容を確認し、それから対策を講じており、迅速な対応に課題がありました。また、インシデント発生時の切り分けをシステム運用課で行わなければならないといった負担があったのです。 さらに情報系システムの24時間365日運用が求められるようになると、従来の仕組みでは即時対応が困難であり、昼夜を問わずに対応にあたる担当者の人員増という課題に直面しました。」(小俣 様)
そうした中、情報系システム基盤更改のタイミングで運用監視体制の見直しがプロジェクトで検討され、上記課題解決のため、NSWの運用監視サービスの導入が決定しました。また、同時期に銀行内の事務の見直しによる合理化・効率化の促進によりシステム運用課業務の抜本的な見直しも行われました。
NSWの選定理由
低コストとITIL準拠を選定の決め手にNSWのサービスを導入
システム統括部で運用監視サービスについての話題が挙がったのは、プロジェクトが始動した2018年4月よりも前、2017年7月のことだったといいます。その頃、ほぼ同時期に山梨中央銀行全体の業務改革を推進するBPR(Business Process Reengineering)プロジェクトも立ち上がっていましたが、その中でもシステム運用監視体制を見直す必要性が取り上げられていたとのことです。
「当時、システム運用課では事務処理とシステム運用業務の両方を担当する非効率な面がありました。事務面についてはバックオフィスの集中部門に統合することになったのですが、運用監視についてもシステム基盤を再構築するのに合わせて見直すことにしました。」(小俣 様)

その新たなアウトソーシング先として山梨中央銀行が選んだのが、NSWでした。
「NSWには、当行がメインフレームの勘定系システムを自前で運用していた時代に運用監視を委託していた時期がありました。その時のNSWが提供する運用監視サービスの品質を高く評価していたため、システム運用監視の新しい委託先候補として改めて声をかけました。」(小俣 様)
システム統括部では、従来の委託先ベンダーやNSWを含む4事業者の運用監視サービスを入念に比較し、最終的に導入を決めたのが、NSWの運用監視サービスでした。
「比較検討にあたって一番のポイントになったのは、運用コストです。NSWの運用監視サービスは、24時間365日体制をシェアードサービスとして提供しているため、専任担当者が付く他のサービスよりも運用コストを低減できるところが魅力でした。また、NSWの運用監視サービスがITサービスマネージメントのベストプラクティスをまとめたITIL(Information Technology Infrastructure Library)に準拠していることも重視しました。さらに当行のシステム運用監視の経験があり、運用方針を理解していることも、NSWを選定する決め手になったのです。」(小俣 様)
導入効果・今後の展望
24時間365日の運用監視体制を実現、コストは2-3割減
山梨中央銀行がNSWの運用監視サービスを契約したのは2018年7月。そこからシステム運用監視の手法や手順に関する要件定義、設計、マニュアル整備、テスト、リハーサルを経て、2019年4月に本番の運用監視を開始しました。

システム統括部 システム運用課 課長代理 渡邉 拓矢 様
「要件定義や設計、マニュアル整備については、従来から利用していたものを参考に、NSWのシェアードサービスに合わせる形で見直しました。このときに運用監視業務を一つひとつ確認しながら効率化・合理化を進めるところには苦労しましたが、NSWのITサービスマネージメントに関する知見を活用することで、当行側の運用監視体制に最適な形で落とし込むことができました。運用監視体制は、従来からの移行というよりもほぼ作り直しています。運用監視サービスのなかでインシデントが発生した際の切り分け、当行やベンダーへのエスカレーション、対策に用いるドキュメントや台帳の管理といった部分は、ITILのITサービスマネージメントに準拠する形でNSWに担当してもらっています。」(渡邉 様)
プロポーザル作成から要件定義、設計までの期間中は、NSWの担当者2名が山梨中央銀行に常駐し、作業の支援を行っていました。
「NSWとは月次で報告会を開催しているほか、通常時から密なコミュニケーションを図っています。キャリアベンダーなどとの調整が必要なときにも間に入ってもらえるので、とても助かっています。」(渡邉 様)
NSWの運用監視サービスを利用し5年以上が経過する中で、NSWが担当する運用監視の対象領域は広がり、現在はオンプレミスのシステムだけでなく、AWS(Amazon Web Services)やMicrosoft Azureなどパブリッククラウド上で稼働するシステムの運用監視も担当しています。
「NSWの運用監視サービスを利用する中で、特に効果を感じているのは、当初の導入目的である24時間365日の運用監視が実現できたことです。夜間であっても何らかの障害発生時には、すでにエスカレーション先に連携した状態で報告が入るので、運用管理チームの業務負担は大きく軽減され、全体の対応時間も大幅に短縮したと考えています。もちろん、シェアードサービスによる運用コストの低減効果も得られており、以前の運用コストより2~3割程度は削減できました。」(渡邉 様)
今後も引き続きNSWの運用監視サービスを継続して利用する意向があるという山梨中央銀行。NSWの運用監視サービスはこれからも、山梨中央銀行の安定した銀行システムの運用を支え続けていきます。