株式会社HARITA様(以下、HARITA)では、プラント停止リスクの低減と点検業務の省力化に向け、デジタルツイン設備管理サービス「ZeugMa」と、アナログメーター読み取りAI「LiLz Gauge」を導入しました。デジタルツインと計測データを組み合わせた設備管理の高度化により、点検業務の効率化と、故障予知に向けたデータ活用基盤の整備を進めています。
課題
- 設備負荷が大きく、温度・電流量・差圧などの変化を細かく把握する必要があった
- 各所に設置された計器の確認・記録に人手がかかっていた
- 将来的には、蓄積データを活用した故障予知を目指している
解決策
- Matterportと連携可能なZeugMaを導入し、デジタルツイン上で設備情報を可視化
- IoTセンサーやデジタル計器のデータを同一画面で一元管理
- LiLz Gaugeも連携し、アナログ計器の自動検針にも対応
効果
- 点検業務を2人で行う体制から1.5人分に軽減
- 異常アラートにより、プラント故障の発生リスクを低減
- データ蓄積が進み、故障予知や分析高度化に向けた基盤を整備
■会社紹介文
HARITAは、産業廃棄物および一般廃棄物の収集運搬・中間処理から金属リサイクルまでを手がける、総合リサイクル企業です。「世界に循環を、あなたと幸せを。」を経営理念に掲げ、家電、自動車、二輪車、太陽光パネルなど、幅広い分野でリサイクル技術を追求しています。より高度な資源循環を推進する企業として、循環経済型社会の構築に取り組んでいます。

導入の背景・課題
設備負荷の大きい現場で、異常の早期検知が課題に
HARITAでは、より高度な資源循環の実現に向けて、デジタル技術の活用を段階的に進めています。その推進役として、2020年9月に全社横断組織の「DX会議」を立ち上げました。
イノベーション戦略本部 事業戦略ユニット デジタルトランスフォーメーション担当
中村 和歳 様
「狙いは、長年にわたって蓄積してきたリサイクル技術と、AIなどの最先端テクノロジーを結びつけて、デジタルトランスフォーメーション(デジタル技術での業務変革)を起こすことです」(中村様)
同社では、まずアナログデータをデジタル化し、そのデータを業務に活用しながら、将来的には事業変革へとつなげていく方針です。設備管理の高度化も、その一環として位置づけられています。
廃棄物処理の現場では、さまざまな素材や大きさのものを破砕・選別するため、一般的な製造業に比べて設備への負荷が大きくなります。そのため、温度や電流量、差圧などの変化をきめ細かく把握し、異常の兆しをできるだけ早く捉えることが重要でした。
しかし、プラント内の各所に設置された計器は人の手で確認し、決められた時刻に記録して回る必要があり、日常点検の負担は小さくありませんでした。その結果、異常の事前検知まで十分に手が回りにくいという課題がありました。
こうした背景から、設備故障によるプラント停止を防ぐための点検業務の高度化が求められていました。
NSWを選定した理由
デジタルツインと設備データを一元管理できる点を評価
HARITAでは、現場の課題解決につながる新しい技術の活用を積極的に進めてきました。2025年2月に3Dデジタルツインプラットフォーム「Matterport」を導入したのも、その取り組みの一環です。設備状況の確認や情報共有への活用を見込み、導入に至りました。
一方で、デジタルツインを実際の設備管理に活用するには、3Dモデルの表示だけでなく、各種の計測データもあわせて確認できる仕組みが必要でした。そこで、Matterportと連携可能なNSWのデジタルツイン設備管理サービス「ZeugMa」の検討が進められました。
選定時に評価されたのは、3Dモデルと設備データを一つの画面で把握できる点です。3Dモデルに加え、IoTセンサーなどのデータもクラウド経由で取り込み、設備の状態をあわせて確認できることが、設備管理の高度化に向けた要件に合致しました。
アナログ計器のAI読み取りデータ連携も評価
HARITAの射水リサイクルセンタープラントでは、針の数値を目視で確認する必要のあるアナログメーターが多く使用されています。ZeugMaは、「LiLz Gauge」との連携により、アナログ計器のAI読み取りデータも取り込むことができ、IoTセンサーやデジタル計器のデータとあわせて一元管理できる点が評価されました。
「要望を伝えると、弊社が理想とする状態へとNSWが柔軟に調整してくれるので、総合的に見てコストパフォーマンスが高かったことです」(中村様)
画面の見やすさや操作のしやすさも、選定時の評価ポイントでした。現場で扱いやすいことに加え、設備情報を一つの画面で把握しやすい点も、導入を検討するうえでの後押しとなりました。
導入の効果
2026年2月、HARITAは富山県射水市の射水リサイクルセンターに、デジタルツイン設備管理サービス「ZeugMa」を導入しました。クラウドサービスをベースとした仕組みであることから、導入作業は比較的短期間で進みました。
一方で、本格運用にあたっては、HARITAのセキュリティポリシーに適合させるためのネットワーク調整も実施しています。IPアドレスの制限や既存のシングルサインオン(SSO)との連携などを経て、同年4月から本格運用を開始しました。
設備データと映像を統合し、監視体制を構築
監視対象としたのは、色選別機のプラント(アルミ選別用カラーソーター)です。
温度計、振動計、差圧計などのアナログメーターにはIoTカメラを計4台設置したほか、コンベアの詰まりや鉄くずの堆積状況を遠隔で確認するため、リアルタイム映像を取得するWebカメラを3台設置しました。
電力ロガーなどデジタル計器のデータも接続し、これらの情報をデジタルツイン画像とあわせて一つの画面で把握できる環境を整えています。画面は射水リサイクルセンター内のモニターだけでなく、インターネット経由で高岡本社および各支店からも確認できる構成です。
点検業務の省力化と異常対応の迅速化
導入後、まず効果として表れたのが、点検業務の省力化です。これまで人手をかけて行っていた確認作業の一部が効率化され、現場の負担軽減につながりました。
資源循環生産本部 射水RCサイト 射水選別チーム リーダー
森田 昂輝 様
「2人でフル稼働していた点検作業が、1.5人分に軽減されました。省力化効果は明らかです」(森田様)
あわせて、温度、振動、差圧などにしきい値を設定することで、異常発生時にはセンター内モニターのアラート音と担当者へのメール通知で知らせる運用も始まりました。担当者が現場のどこにいても通知を受け取れるようになったことで、問題の早期発見と初動対応の迅速化にもつながっています。
「直近1~2カ月で、異常な温度のアラートは何度かありました。担当者がどこにいてどういう作業をしているときでも、タブレットでメールをすばやく確実に受け取れます。作業効率が良いし、問題の早期発見にも役立ちます」(森田様)
こうした運用により、異常を早めに把握し、すばやく対処する流れが日常業務に組み込まれました。その結果、設備故障やプラント停止の発生リスク低減にもつながっています。
信頼性の高いデータ蓄積で、故障予知へ前進
導入効果は、省力化や異常対応の迅速化にとどまりません。定時の自動計測により、後から解析に活用できる信頼性の高いデータを継続的に蓄積できるようになったことも、大きな成果の一つです。
イノベーション戦略本部 R&Dユニット
硎 拓也 様
従来は、現場の人手不足などによって点検時刻がずれることもありましたが、運用開始後は計測タイミングのばらつきが抑えられ、データ活用の土台づくりが進みました。
「いままでは、現場の人手が足りなかったりすると、決められたタイミングに点検できず、計測時刻がずれることもありました。今は定時に自動計測するので、後で解析するための信頼性の高いデータが蓄積できています」(硎様)
HARITAが次のテーマとして見据えているのは、故障の「予知」です。従来は、装置が故障してから対応に入るケースも少なくありませんでしたが、今後は蓄積データの解析を通じて、不具合の兆候を早期に捉え、事前に対策を講じる体制づくりを目指しています。
「また、クレーム発生時に問題のあるロットを特定し、合わせてそのときの設備状況も詳細に判定できるよう、トレーサビリティの実現と高度化も進めていく考えです。」
教育や情報共有など、活用範囲も拡大
デジタルツイン画像は、設備監視だけでなく、教育や情報共有の場面でも活用が広がっています。たとえば、工事業者とのオンライン打ち合わせでは、3D空間をウォークスルーしながら工事箇所の状況を共有できるようになりました。
本社とリサイクルセンターの現場が同じ画面を見ながら打ち合わせを行う運用も定着し、新入社員教育やプラントの操作マニュアル作成にも活用されています。
「先日もリサイクルセンター内で工事をしてもらう必要がありましたが、工事業者とのオンライン打ち合わせで、3D空間をウォークスルーして、工事箇所の様子をしっかり説明することができました」(森田様)
また、見学や視察の場面でも、デジタルツイン画像は有効に機能しています。設備の状況や現場の構成を視覚的に共有しやすくなったことで、社内外を問わず情報共有の高度化にもつながっています。
今後の展望
統合管理の領域拡大でDX効果を高めていく
HARITAでは、設備管理の高度化にとどまらず、統合管理の対象領域を広げながらDX効果をさらに高めていく構想を描いています。今後の展開として見据えているのは、拠点展開、データ活用の高度化、そして業務領域の拡大です。
複数拠点・複数プラントへの展開を視野に
まず見据えるのは、監視対象の拡大です。
「射水リサイクルセンター内でも、導入しているプラントは1つだけなので、他のプラントにも横展開していきたいです」(森田様)
ZeugMaには、複数拠点をマッピング表示し、拠点ごとに表示データを切り替えられる機能が備わっています。射水リサイクルセンターでの運用を起点に、今後は他拠点や他プラントにも展開することで、HARITA全体の情報共有をさらに進めていく考えです。
IoTセンサー拡充とデータ分析の高度化へ
イノベーション戦略本部 R&Dユニット リーダー
仲里 卓 様
次のテーマは、接続するIoTセンサー類の拡充と、データ分析の高度化です。今後、取得するデータの種類や量を増やしていくことで、より実態に即した設備管理や分析につなげていく方針です。
将来的には、PLC(シーケンサ)や各種センサーの選定・接続も含め、自社に適した設備管理環境を柔軟に構築・運用していく姿を視野に入れています。
「最終的には、自分たちで機器やセンサーを選んでつなぎ、安価な設備管理環境を自分たちで運営していくのが理想形です」(仲里様)
既製の仕組みをそのまま使うのではなく、自社の現場に合った形で必要な機器やデータを組み合わせながら、継続的に改善できる環境づくりを見据えています。
設備管理から周辺業務へ、統合管理の領域を拡大
今後、社外SaaSアプリケーションとの連携も進めることで、現場担当者だけでなく、さまざまな業務部門や経営層まで活用範囲が広がっていくことも見込まれます。
「現場の可視化も大切ですが設備の稼働状況やメンテナンス計画、生産計画と出荷や在庫管理データなどを統合し活用するのが目的です。そこまでできればDXの効果を最大限に発揮でき真のデジタルトランスフォーメーションに繋がるでしょう」(中村様)
設備情報を起点に、複数拠点、複数業務へと統合管理の範囲を広げていくことが、HARITAの今後のテーマです。今回の取り組みは、全社規模でのデータ活用基盤づくりに向けた第一歩として位置づけられています。


NSWは、ZeugMaの提供に加え、各種サービスとの連携を含む導入を支援します。お客様の要件に応じて、設備情報の可視化、計測データの統合、運用開始に向けた各種調整を進め、設備管理の高度化とスマートメンテナンスの推進を支援しています。
