シニアライフクリエイト様は、高齢者向け配食サービス事業を展開する企業です。
基幹システムの一部である過去の販売データ分析機能をAWSストレージサービスS3(Amazon Simple Storage Service)とデータ分析サービスAmazon Athenaに移行することで最適化を行い、コストダウンと運用負荷の軽減を実現しました。
本記事では、このプロジェクトの背景、内容、効果、移行のポイントについてご紹介いたします。
課題
- 基幹システムで稼働していた一部機能が旧システムに取り残されており、コスト負担が大きい
- データ参照するためのアプリケーションの修正・変更は都度ベンダーに依頼する必要がある
解決策
- RDSと専用アプリケーションで構築されていた販売データ分析システムをAmazon S3とAmazon Athenaに移行
効果
- 運用にかかっていた月額費用が1/20となり、コストダウンを実現
- GUIを操作してお客様自身で運用保守を実施
- Tableauを使用した様々なビュー作成により、営業活動の柔軟性やスピード面で顧客への対応力が向上
株式会社シニアライフクリエイト
■企業理念/SENIOR LIFE CREATE Credo
健康寿命の伸長こそがご高齢者の生きがいと考え、
ご高齢者がいきいきと暮らせる環境づくりを「食」を通じて目指していきます。
健康寿命の伸長のために、健康で安全な食事をお届けするとともに、
ご高齢者が人生を楽しみ、生きがいを持って暮らせる環境づくりを行います。
背景
シニアライフクリエイト様では、基幹システムのリプレースを行っていました。最新の業務データは新基幹システムへ移管されたものの、これまでの膨大な販売データを含む全データの移管はコスト面で厳しく、一部の機能は既存システムで保持し続ける必要がありました。
旧基幹システムはRDS(リレーショナルデータベース)で構成されており、コスト負担が大きく、さらにそれらのデータを参照するためのアプリケーションに関してもベンダー保守が切れており、柔軟な変更ができないことが課題となっていました。
そして、2022年8月にRDSの現行バージョンのサポートが終了することとなったため、既存の構成を見直すことになりました。
内容
お客様の最も重要なご要望は、営業活動で利用するため、既存環境に存在する過去の販売データを残しておくことでした。
また、 RDSは必須ではなく、費用を抑えることを重視されていました。
これらのご要望を解決するため、データの保存先に Amazon S3、データ分析基盤にAmazon Athenaを導入しました。
Amazon S3はAmazon Simple Storage Serviceの略で、Amazonが提供する容量無制限のストレージサービスです。
Amazon S3をデータストアとして利用することで、大幅なコスト削減が見込めます。
また、Amazon S3からデータを取得する手段として、Amazon Athenaを採用しました。
Amazon AthenaはAWSのデータ分析サービスで、Amazon S3に格納されているデータを簡単に操作、分析することができます。
シニアライフクリエイト様では、営業が過去データを参照するためにTableauを利用しており、Amazon Athenaとの連携が可能であることも選定のポイントとなりました。
移行手順
①Biz∫のViewCreator機能を使用して、 RDSに格納されているデータをViewデータに変換
②Viewデータをエクスポートし、CSV化して、S3へのエクスポートを実施
③分析基盤の構築については、AthenaのソースにS3を指定
④お客様管理のTableauからAthenaへの関連付け設定
効果
大幅なコストダウン
過去の膨大な販売データを保存するためだけにRDSのライセンス費用がかかっていましたが、S3に置き換えたことで不要となり、データの保存費用およびAthenaによるリクエスト費用のみとなりました。運用にかかっていた月額費用が1/20となり、コストダウンを実現しました。
運用最適化
これまでRDS上のデータを分析するためのアプリケーションはベンダーに頼らざるを得ず、分析内容を変更するにも時間やコストがかかっていました。Amazon AthenaではGUIで操作が可能なため、プログラミング等の知識がなくても分析基盤を扱えるようになり、お客様自身で運用保守を実施できるようになりました。さらに、Tableauを使用した様々なビューを作成できるようになり、営業活動の柔軟性やスピードの面で顧客への対応力が大幅に向上しました。
移行ポイント
1. Tableauに表示するデータの選定・時間の短縮
シニアライフクリエイト様としてはTableauをさらに活用したいため、多くのデータを表示させたいというご要望をいただきましたが、Tableauの仕様上データ表示数に制限がありました。実際に利用する営業部の方を含め、表示可能なデータ量とそれに合わせたデータ選定について理解を深め、Tableauでの分析結果表示のベースを構築しました。
加えて、Amazon S3からTableau側にビューのデータを表示させるという過程で、データ量が非常に多いことにより表示に時間がかかるという課題がありました。Tableauの詳細な設定機能を活用しつつ、抽出データのキャッシュやAmazon Athena上のスクリプトの調整など、繰り返し検証を行い最適化することで、表示時間の短縮を可能にしました。
2. IaC(Infrastructure as Code)の導入
IaCはコードを利用したインフラ構成管理ツールです。OSやミドルウェアに関する情報をコードで記述し、後にそれを実行すると、記述通りの環境が簡単に構築できます。様々なシステム移行作業において、移行前環境のバックアップは必須ですが、そのバックアップを戻すための手順の作成や検証に必要な作業コスト、スケジュールの圧迫などの負荷を考慮し、導入を決めました。
本プロジェクトがスタートしたころIaCはまだ一般的ではなく、チームとしても導入実績がありませんでしたが、お客様にご協力、ご理解をいただき採用いただくことができました。本プロジェクトにかかる工数を大幅に削減でき、また、本案件の経験により、NSWのAWSチームとしてのナレッジも蓄積され、他案件でのご提案およびご対応ができる基盤ができました。
このプロジェクトの成功において、シニアライフクリエイト様とNSW AWSチーム双方の協力が非常に大きく作用しました。課題の早期解決、自社での運用を目指して、お客様にも熱心に参加いただきました。システムに関する環境や運用の理解を深め両社様々な課題に対処することでこのプロジェクトを成功に導くことができました。