【福本勲氏と考える製造DXの今!】Part3:今あるべきSIerの姿とは?
スマートファクトリー

DXへの関心が高まる製造業界でも、本来のDXに取り組めている企業は多くありません。製造業のDX実現には何が必要か、合同会社アルファコンパス 代表CEOの福本勲さんをお招きし、当社の製造部門担当と対談しました。全3編におよぶ本シリーズのうち、Part3では、私たちSIerは、製造DXに対してどのように取り組むべきなのかについてお話ししていきます。

目次

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    対談者紹介

    荒井 毅一

    NSW株式会社
    荒井 毅一
    大手製造メーカーに勤務後、TPS(トヨタ生産方式)の社内展開、新規事業立上げなどを経てNSWに入社。国内・海外工場システム構築・展開など、特に製造分野に深い知見を持ち、顧客目線での、お客様のDX推進を支援しています。

    福本 勲

    合同会社アルファコンパス
    福本 勲
    合同会社アルファコンパスの代表CEOを務め、製造業のデジタルトランスフォーメーションやマーケティング支援に注力しています。また、中小企業診断士としても活動し、講演や執筆を通じて製造業の変革を推進しています。

    堀内 忠彦

    NSW株式会社
    堀内 忠彦
    大手精密機械メーカーに勤務後、コンサルタントを経てNSWに入社。お客様と共創、伴走するコンサル業務で製造業主体のDXを推進。技術士(経営工学部門)として、生産業務プロセス改善、SCM、現場改善指導等にも従事しています。

    ハードから見たソフトの品質と、ソフトからみたハードの品質

    福本さんアイコン
    統計情報を見ると、日本だけIT人材の大半がベンダー側にいる*という状態がずっと変わっていないということがあって、これによっていろんな課題が生じているのではないかと感じています。

    *引用:総務省「令和元年版 情報通信白書」, p.160
    独立行政法人情報処理推進機構が調査した結果によると、ICT企業に所属するICT人材の割合は、2015年時点で日本が72.0%であるのに対し、米国では34.6%、英国では46.1%、ドイツでは38.6%等となっている。
    (出典)総務省(2019)「デジタル経済の将来像に関する調査研究」IPA調査を基に作成

    引用:総務省「令和元年版 情報通信白書」, p.160

    福本さんアイコン
    こうしてIT人材の偏りがあると、ユーザーはIT化やデジタル化の取り組みにおいて、ベンダーに依存するしかなくなるわけなのですが、発注となったら決まったものしか作らない関係になってしまいますよね。

    荒井さんアイコン
    調達とか購買ですからね。

    福本さんアイコン
    パートナーとして一緒にやっていこうって相手に対して“調達”とか“購買”って、それは違うのではないかと思います。契約形態も含めて見直す必要もありますよね。

    荒井さんアイコン
    どうしてこういう状態になったんですかね? 今までメーカー側がIT人材にあまり期待していなかったから、SIerなりIT企業に人が流れていったんですかね。

    福本さんアイコン
    ストレートに言うと、製造業の重要度の認識において、システム作りよりものづくりの方が、位置づけが高いという状態だったのではないかなと思います。ソフトウェアはハードウェアを補完する役割という認識だったのではないかと。

    荒井さんアイコン
    なるほど、確かにそうですね。

    福本さんアイコン
    ただ今は、自動運転も普及して、SDV(Software Defined Vehicle)のようなソフトとハードを組み合わせる考え方がどんどん普及してますよね。ドイツでもSofDCar(Software-Defined Car Consortium)*」というプロジェクトが立ち上がってるんですが━━

    *SofDCar(Software-Defined Car Consortium)
    SofDCar(Software-Defined Car Consortium)は、2021年8月にスタートした、ボッシュやメルセデス・ベンツ、シュトゥットガルト大学やカールスルーエ工科大学(KIT)などを含む、ドイツの13の有名企業・研究機関がドイツ連邦経済・気候行動省(BMWK)から資金援助を受けて参加している共同事業体です。現代の車両の中核要素であるソフトウェアによって生み出される新しい機能の開発やビジネスモデルの可能性を追求しています。

    SofDCarホームページ【SofDCar】

    福本さんアイコン
    こうした中で、ドイツの製造業の方たちも、ソフトとハード両方のコンポーネントで構成されたシステムの信頼性と安全性を確保することの重大さと難易度を認識しはじめているようです。SofDCarでは、ソフトとハードを組み合わせた信頼性と安全性の確保ってどう実現するのかという話を、集まって真面目に議論していると言われています。

    堀内さんアイコン
    確かにそうですよね。ソフトもソフトだけでは動かない、そこにはハードもあるわけですからね。今までの日本の開発設計見てると、ハードはハード、ソフトはソフトで━━

    荒井さんアイコン
    最後にくっつけてる。

    堀内さんアイコン
    そう。でも今はもう、最後にくっつけるのではなくて、設計段階の上流から組んで評価していかないといけない。

    福本さんアイコン
    設計までフロントローディングしてやっていかないとこの問題は解決しないと思います。ものづくりの現場まで降りてから、「ここ少しずらした方が作りやすいな」となっても、

    堀内さんアイコン
    できないですよね。

    福本さんアイコン
    ハードから見たソフトの品質と、ソフトからみたハードの品質って、考え方が違うのではないかと思うんですよね。だからソフト対ハードみたいな対立軸にせず、互いに違いを理解しないといけない。デジタルの良い所もいっぱいあるので、互いのメリットをどう最適に組み合わせて実現していくかって話をしていくことが重要なんじゃないかと思います。

    一緒に未来図を考えていく関係性

    堀内さんアイコン
    SIerは今、工数管理になっていて、この工数中心の価値観を、提案力を主軸にした価値観に変えていく必要があると思います。SIerの壁を越えたドメインの知識も掴んで、融合させた提案力がないといけないですよね。

    福本さんアイコン
    ベンダー側もドメインの知識をちゃんと持つことは大事だと思います。欧米では合弁会社を作ったり、M&Aなどによってデジタルのケイパビリティを獲得している製造業なども増えていますよね。日本でもミスミさんがコアコンセプト・テクノロジー(CCT)さんと合弁会社*を作りましたよね。

    *株式会社DTダイナミクス
    株式会社DTダイナミクスは、株式会社ミスミグループ本社と株式会社コアコンセプト・テクノロジーが設立した合弁会社です。ミスミが提供するオンライン機械部品調達サービス「meviy(メビー)」などのシステム開発や保守、運用業務を主な事業内容とし、CCTが持つITエンジニア調達プラットフォーム「Ohgi」を利用して、IT人材の確保とシステム開発速度の加速、そしてグローバル市場でのさらなる活躍を目標としています。

    株式会社DTダイナミクスホームページ【株式会社DTダイナミクス】

    福本さんアイコン
    合弁会社を作って受発注の関係がなくなると、目先の売り上げは減るのですが、本当にいい関係であれば、一緒に未来図を考えていくといった関係を育むことができるようになりますよね。こういった取り組みも選択肢に含めていくことが重要なのではないでしょうか。

    堀内さんアイコン
    それが一番だと思います。

    荒井さんアイコン
    IT会社の人材教育も、たぶん間違えていて、どちらかというと技術力を一生懸命磨くような教育ばかりしてたんだと思うんですよね。ただ、ユーザー企業の業務を知らないと、結局良い提案なんてできないので、ユーザー企業と組んで、ドメインを超えてユーザー業務もちゃんと学べるような建付けを作らないと、提案力のある人は絶対育たない。

    堀内さんアイコン
    製造DXといってSIerが入っていっても、ものづくり観点での品質を知らなければ、お客様と同格に話せないし、仕様にも落とせない。製造全体のサプライチェーンがどうなっているのかをしっかり話せて、そこにITを連携させた提案ができないと太刀打ちできないと思います。縦を通して、ユーザー企業のドメインの教育をしないといけないと思いますね。

    あるべきSIerの姿とは

    荒井さんアイコン
    私は元々メーカーにいたんですが、製造業のIT屋って内向きの、社内の工場の効率化とかの仕事ばかりなんですよね。SIerにくると、いろんなお客さんと出会えて、いろんな話が聞けるじゃないですか。こんな企業でもここまでしかできてないんだとか、ここまで考えてんだとかわかるので、そこは面白いと思います。東芝さんはいっぱい現場持ってますよね。

    福本さんアイコン
    東芝デジタルソリューションズも、ITもOTも対応していますし、いろいろな製造業さんの支援をしています。「うちの工場でこういう問題があって」という相談を受けたときも「それが本当だとすると、原因はここからここの間でしかありえない気がします」と答えたら「どうしてそんなことまでわかるんですか?」と言われたりしたことはありました(笑)

    荒井さんアイコン
    やっぱり現場持ってるSIerさんは強いですよね。

    堀内さんアイコン
    社内の事業間で繋がりを持つことが重要ですよね。社内目線だと業務ごとに完結してるような感じになりますが、お客様目線ではそうじゃない。一つの業務では結論だせないのがいっぱいあるわけじゃないですか。SIerとして違うツールとか考え方を持ってくる必要がありますよね。

    福本さんアイコン
    コマツさんが行っているLANDLOG*も、ソフトウェア、ハードウェアを跨いだ、いろいろな企業がエコシステムを作って取り組んでいるわけですが、それは、建築機械を納めているだけでは顧客の現場の課題をトータルで解決できないことに気づいてるからなのではないかと思います。

    *LANDLOG
    LANDLOGは、2017年より、コマツ、株式会社NTTドコモ、SAPジャパン株式会社、株式会社オプティムの4社共同でスタートした、建設生産プロセス全体をデジタル化し、効率化と安全性の向上を目指すオープンプラットフォーム。現在では約50のパートナー企業が、建設現場の一元管理されたデータを活用したリューションを提供するアプリケーションプロバイダーとなっており、建設業界全体の生産性と安全性の大幅向上と、新たな価値を創造するエコシステムの構築を目指しています。

    ランドログとは 【LANDLOG】

    福本さんアイコン
    どこの企業組織の中にも業務の分界点はあると思うのですが、顧客目線に立った時にはそれらも繋がってないとトータルサービスは実現できない。顧客から「同じ企業なら連携できるでしょ」と言われて「わからない」とは言えないですよね。「僕はここしかわからないので」と答えても「じゃあわかる人連れてきてよ」となるだけなので(笑)

    堀内さんアイコン
    思います。すごく大事、一番大事なんじゃないですかね。

    荒井さんアイコン
    私たちのDXの方針でも、「お客様と共に伴走」を掲げてますからね。

    福本さんアイコン
    パートナーの立場として、お互いにいろんなことを学びあいながらやってくことが大事ですよね。デジタルはあくまでも手段ですから。

    終わりに ~NSWが実現するDX~

    今回は合同会社アルファコンパス 代表CEOの福本勲さんをお招きし、製造DXの現状、そして、SIerのあるべき姿の話をお伺いしました。NSWは長年にわたる幅広い業種での豊富な実績と経験を生かし、お客様の潜在課題を多彩なデジタル技術で柔軟に解決することで、よりよい未来を築いていきたいと考えています。NSWの提供するスマートファクトリーソリューションもぜひご覧ください。

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